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交通事故により高度な後遺障害が残った場合の損害

交通事故により高度な障害が残った場合の損害

交通事故による傷害が原因により、1級1号の「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要する」後遺障害が残った場合には、被害者には、介護等に関連する様々な損害の発生が認められます。

この中で、「将来の介護費」の損害は、重要なもので、別のページで、説明していますが、介護等に関連して、発生する損害は、これにとどまらず、様々な損害が想定されます。

ここでは、裁判上、どのような損害が認定されたかを説明いたします。

交通事故の被害者の介護のため、賃料差額、転居費用

 東京地裁28.2.25(確定) 
事案の概要被害女児(7歳)は、1級1号に認定された。被害者の家族は、事故当時、月額16万3000円の賃貸マンションに居住していたが、被害者の介護を行うため、平成23年10月28日の事故発生から約5か月後の平成24年3月15日、バリアフリーの賃貸マンション(賃料月額20万円)に転居し、さらに2年後の平成26年2月26日に、別のバリアフリーの賃貸マンションに転居した(賃料月額23万5000円)。
被害者の請求内容1回目の転居費用20万4750円2回目の転居費用20万円1回目の転居後、2回目の転居までの月額賃料差額3万7000円をもとに、23.8か月分の88万0600円2回目の転居後の賃料と事故当時の賃料差額7万2000円×12か月×17.7169(被害者の平均余命79年のライプニッツ係数19.5763-事故から2回目の転居までの2年分のライプニッツ係数1.8594)=1530万7401円以上合計1659万2751円
判決による認容額  賃料差額704万7468円(3万円×12か月×19.5763)と1回目の転居費用20万4750円の合計725万2218円
判決理由被害者の後遺障害の程度から転居の必要性は認められる。ただし、事故当時のマンションと1回目の転居後のマンションと2回目の転居後マンションは、間取りも立地条件もことなるため、単に賃料の差額があることのみから、その差額をそのまま本件事故と相当因果関係ある損害と認めるのは困難。シニア向けの分譲マンション(注;バリアフリーを想定していると考えられます)は。同じ面積でも、一般の分譲マンションに比べて、販売価格が、2割程度高くなるとの指摘があることなどを総合考慮すると3万円(注;事故前の賃料16万3000円の2割は3万2000円程度となります)を、事故と相当因果関係ある賃料差額と認めるべき。

上記の件の加害者側の反論をみると、賃料は、当該物件に係る諸条件(築年数、耐震性、所在地、周辺環境、設備、間取り等)によって決定され、必ずしもバリアフリーの賃貸マンションの賃料が、非バリアフリーの賃貸マンションの賃貸マンションのそれより高額とはいえないことや、事故前に被害者が居住していたマンションの広さは、35帖に対し、1回目の転居後のそれは約53帖、2回目のそれは41帖と、広くなっていることからすると、転居後の賃料差額と交通事故との間に相当因果関係はないとの指摘がなされています。

これに対し、裁判所は、シニア向けの分譲マンションは、一般より2割程度販売価格が高くなるという指摘を賃料にも応用して、事故前の賃料の2割程度の賃料差額を、本件事故と相当因果関係ある損害と認めたものです。