交通事故による高次脳機能障害の自賠責の等級認定の基準
交通事故による高次脳機能障害の自賠責の等級認定の基準
交通事故による高次脳機能障害の等級認定は、上記の「脳外傷による高次脳機能障害の等級認定にあたっての基本的な考え方」の右欄に記載の「補足的な考え方」に記載されたイメージを参考にして行われます。
他方で、労災補償における障害認定基準では、障害される能力を
① 意思疎通能力(記銘・記憶力・認知力・言語力等)
② 問題解決能力(理解力・判断力等)
③ 作業負荷に対する持続力・持久力
④ 社会行動能力(協調性等)
の4つに分類した上で、
能力喪失の程度を6段階に区分し、軽い方から
A わずかに喪失(多少の困難はあるが概ね自力でできる)
B 多少喪失(困難はあるが概ね自力でできる)
C 相当程度喪失(困難はあるが多少の援助があればできる)
D 半分程度喪失(困難はあるがかなりの援助があればできる)
E 大部分喪失(困難が著しく大きい)
F 全部喪失
そして、能力喪失の程度に応じて、下の表のような等級認定が、労災においてはなされます。
最も重い障害のある能力の程度による等級 | ||
3級 | F(できない/全部喪失)「職場での他の人と意思疎通を図ることができない」「課題を与えられてもできない」「持続力に欠け働くことができない」「社会性に欠け働くことができない」のどれか1つでも当てはまれば、労災の等級3級に該当 | E(困難が著しく大きい/大部分喪失)2つ以上㋐【①実物を見せる、やってみせる、ジェスチャーで示す、などのいろいろな手段とともにはなしかければ、短い文や単語くらいは理解できる ②ごく限られた単語を使ったり、誤りの多い話し方をしながらも、何とか自分の欲求や望みだけは伝えられるが、聞き手が繰り返して尋ねたり、いろいろと推測する必要がある】㋑【①手順を理解することは著しく困難であり、頻繁な助言がなければ対処できない ②1人で判断することは著しく困難であり、頻繁な指示がなければ対処できない】㋒【障害により予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督を頻繁に行っても半日程度しか働けない】㋓【障害に起因する非常に不適切な行動が頻繁に認められる】 以上㋐~㋓の2つ以上にあてはまれば労災の等級3級に該当 |
5級 | E(困難が著しく大きい/大部分喪失)右上の欄のどれか1つ当てはまれば労災等級5級に該当 | D(困難はあるがかなりの援助があればできる/半分喪失)2つ以上㋐【①職場で他の人との意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためには時々繰り返してもらう必要がある ②かかってきた電話の内容を伝えることに困難を生じることが多い ③単語を羅列することによって、自分の考え方を伝えることができる】問題解決能力㋑、持続力・持久力㋒、社会行動能力㋓は、CとEの中間 |
7級 | D(困難はあるがかなりの援助があればできる/半分喪失)右上の欄のどれか1つにあてはまれば労災等級7級に該当 | C(困難はあるが多少の援助があればできる/相当程度喪失)2つ以上㋐【①職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためにはたまに繰り返してもらう必要がある ②かかってきた電話の内容を伝えることはできるが時々困難を生じる】㋑【①手順を理解することに困難を生じることがあり、たまには助言を要する ②1人で判断することに困難を生じることがあり、たまには助言を必要とする】㋒【障害のために予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督がたまには必要であり、それなしには概ね8時間働けない】㋓【障害に起因する不適切な行動がためには認められる】以上㋐~㋓の2つ以上にあてはまれば労災の7級に該当 |
9級 | C(困難はあるが多少の援助があればできる/相当程度喪失)右上の欄のどれか1つにあてはまれば労災9級に該当 | |
12級 | B(困難はあるが概ね自力でできる/多少喪失)㋐【① 職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、ゆっくり話してもらう必要が時々ある②普段の会話はできるが、文法的な間違いをしたり、適切な言葉を使えないことがある】問題解決能力㋑、持続力㋒、社会行動能力㋓は、A(※)とCの中間 |
※Aランクの具体的な内容について
㋑問題解決能力Aランク【①複雑でない手順であれば、理解して実行できる②抽象的でない作業であれば、1人で判断することができ実行できる】
㋒持続力・持久力Aランク【概ね8時間支障なく働ける】
㋓社会行動能力Aランク【障害に起因する不適切な行動はほとんど認められない】
上記の基準で、3級に該当する場合(Fが1つ、または、Eが2つ以上)に、さらに、介護の必要性の程度に応じて、1級または2級に認定され、生存のための介護が必要とまではいえない場合は、3級に認定される。
労災の等級評価は、労働者を想定しているのに対し、自賠責保険の扱う被害者は、労働者以外のものの含み、また、高齢者や年少者も含み、さらには、労働状況だけでなく、これを含む生活全般についての障害を評価するから、上記の労災基準を単純には取り込めない。ただし、自賠責の認定手続きにおいても、労災認定基準に基づく評価も行い、認定の妥当性を検証するものとされている。