前の交通事故で14級が認定され、再度、今回交通事故で、同様の認定がされた場合の取扱について
前の交通事故で14級が認定され、再度、今回交通事故で、同様の認定がされた場合の取扱について
自賠責の後遺障害等級の認定の取扱によれば、前の事故で、例えば、頸部に14級程度の神経症状の後遺障害の残存が認められた場合、その後、別の事故で、同様に、頸部に14級程度の後遺障害の残存が認められたとしても、前回の事故により、すでに、14級を認定されているから、今回事故後に、再度、同程度の神経症状が、同一の部位に、認められても、その程度が、14級を上回るものでない限り(具体的には12級程度以上と考えられます)、後遺障害非該当と判断される取り扱いになっています。
しかし、実際には、前の事故がかなり古く、今回の事故時には、すでに、前の事故による神経症状は残っていないような場合にまで、このような判断をされると、今回事故による神経症状の残存による後遺障害が、軽視されることになります。
このような場合、裁判例ではどのような判断がなされるでしょうか。
交通事故で、前回交通事故に続いて、再度、同一部位に神経症状の後遺障害が認定された場合の取扱に関する裁判事例
名古屋地裁27.4.17判決(確定) | |
事案の概要 | 交差点の出合い頭事故。頚椎捻挫等 |
前回事故の日時 | H19.7.18、頸部の神経症状につき、14級9号認定 |
今回事故の日時 | H23.3.11、頸部の神経症状については、14級9号を超える等級には該当しないと自賠責の判断 |
自賠責の判断 | 今回事故の頚部の症状については、前回事故で、14級が認定され、同一部位の障害として、後遺障害等級の障害を加重したものとはとらえられないことから、今回事故の頚部の症状については、非該当と判断 |
裁判所の判断 | 被害者は、今回事故の前のH19の事故により、頸部の神経症状について、14級に認定されたが、H21以降は、パートタイマーとして勤務し、家事育児もこなしており、前回事故からの4年近くの経過や、今回事故に近接した(前の)時期に神経症状の訴えがないことからすると、本件事故による14級の認定において、前回事故による神経症状の影響を考えることはできず、素因として考慮することもできない |
以上の事例では、前回事故から4年近くの経過があるものの、裁判所は、前回事故による14級の認定の影響は、今回事故には一切ないことを前提に、被害者に今回事故による同一部位の14級の神経症状の残存を認め、後遺症慰謝料、逸失利益を通常どおり算定しています。
自賠責が、前回事故に引き続いて、同一部位の14級程度の神経症状を評価する場合、前回の14級を超えることはないというような表現を用いることが多いですが、自賠責の考えとしては、後遺障害として認定した以上、1度認定した以上、その後も、継続して症状が残存し続けるのが、当然であるという考えもあるのかも知れません。これを前提に、前回、事故で認定した以上、今回は、さらに悪くなってない以上、後遺症非該当となるのかも知れません。
他方で、裁判所は、今回事故の前の段階で、前回事故による症状は消えていたかどうかを認定した上で、一旦、症状が消えていたのであれば、今回、新たに、14級を認定するという流れになります。
この際、裁判所は、自賠責の今回事故の症状は「14級を超える等級には該当しない」との判断、表現に影響を受けて、今回事故による神経症状を14級は超えないが「14級には該当する」と判断しやすくなる傾向がもしかしたらあるのかも知れません。その上で、今回事故前に、すでに、前回事故による症状の影響が消えていたことが認定されれば、14級に基づく後遺症慰謝料や逸失利益をそのまま認定される可能性が高くなることになります。